現場の属人化をどう乗り越えるか
お世話になっております。 YMGアドバイザリーの山口です。
前回は「改革の最初の一歩」についてお話ししました。
今回は、
多くのフィールドサービス部門が抱える根深い課題=属人化
について、実務的な視点から考察していきます。
属人化の根は「診断力」の属人性にある
現場の属人化とは、単に
「ベテランしか操作方法を知らない」
ことではありません。
特に問題となるのは、
「症状系」のトラブル対応における問診・診断の属人性です。
例えば、
「冷えてはいるが設定温度に達しない」
「ときどき動きが不安定になる」
「壊れてはいないが、動きがおかしい」
といった症状系のトラブルは、
装置の構造や制御ロジックへの深い理解と、
状況把握の勘所が求められます。
これはマニュアル化しづらく、熟練者の経験に頼らざるを得ない領域です。
しかし、ベテラン技術者の大量退職が進む中で、
その「問診のセンス」や「診断力」を
どうやって次世代に継承していくかは、
サービス組織維持と今後の競争力を左右する重要課題です。
“丸ごとAI”ではなく、“支援するAI”へ
近年、生成AIやAIエージェントを用いて、属人性の高い業務を
自動化・代替しようとする動きもありますが、
「AIにすべて任せれば属人化は解消される」という発想は危険です。
現場の実態を踏まえれば、
AIが現場作業者を支援する「アシスタント」的立ち位置が現実的
です。
人間が最終判断を下しつつも、
適切な情報を瞬時に提示し、判断を後押しする役割
としてのAIが、今後の鍵を握ると考えます。
海外事例:Aquant社のアプローチ
参考までに、拙書「なぜ、日本のフィールドサービスDXは進まないのか」でも
取り上げた、米国のAquant社の事例をご紹介します。
Aquantは、フィールドサービス領域におけるAI活用を専門とするSaaS企業で、
ベテラン技術者の問診・診断ノウハウをAIに学習させる
「Service Intelligence Platform」を提供しています。
特徴的なのは、単にFAQを集めるのではなく、
「症状」→「推奨問診項目」→「対処候補」→「対応結果」の一連のフローを
AIが模倣・支援できる点
です。
これにより、若手でもベテランに近い判断が可能になり、
現場対応力の底上げが実現されています。
現場作業者の声やナレッジをリアルタイムに吸い上げて、
継続的にAIが賢くなる仕組みは、日本の現場DXにとっても
大いに参考になると考えています。
解決の方向性:Human-Centric × AI補助
結論として、属人化の解消には、以下の両輪が不可欠だと考えます。
Human-Centricな現場設計(人が使いやすく・納得して使える設計)
AIによる問診・診断の支援とナレッジ蓄積の仕組み化
ベテランの直感や暗黙知を、若手が“活用可能な形”で引き継ぐには、
現場が信頼できるIT・AIツールと、それを活かすプロセス設計の両方が必要です。
次回は、「現場の暗黙知はどう継承できるのか?」についてお話しします。
ご質問などありましたら、お気軽にymg-info@ymg-advisory.com宛ご連絡ください。
引き続きよろしくお願いいたします。