ナレッジを組織で活かすには?

お世話になっております。
YMGアドバイザリーの山口です。

これまで3回にわたり、属人化・暗黙知の継承というテーマを取り上げてきました。

今回はその締めくくりとして、継承したナレッジを組織の“判断力”として活かすにはどうすればよいかを、実例も交えてお話しします。

暗黙知は「受け渡す」だけでは終わらない

「継承=ナレッジ共有」と捉えがちですが、実際の現場では、
共有した知識が“業務として使われる”状態になるには、 もう一段階の変換が必要です。

属人的な判断や直感を引き出し、それを“問い”や“プロセス”と して再構成しただけでは、
実務で活用されずに終わってしまうことも 珍しくありません。

大切なのは、継承したナレッジが
業務プロセスに組み込まれ、意思決定の質を底上げする「判断力の資産化」 にまで
昇華されることです。

学習し続ける“サービスナレッジ基盤”が必要

そのためには、以下のような設計が必要だと私は考えています。

  • 「過去の成功・失敗事例」だけでなく、「意思決定の背景」

    「観察ポイント」「代替案」を含めて蓄積する

  • 現場で実際に使われ、
    使うほどに洗練される“ナレッジエンジン”
    として機能する

  • KPIと連動して、ナレッジの有効性を検証・改善していける

つまり、

知識をストックするだけでは不十分で
運用され、評価され、学習される仕組み

が不可欠なのです。

Makino社(米国)のIFS導入事例にみる「ナレッジの活かし方」

この点で非常に示唆深いのが、Makino USA社の取り組みです。

牧野フライス製作所の北米法人である同社は、
フィールドサービス業務の標準化と効率化を目的に、
IFSのフィールドサービス管理とAquantのナレッジ支援機能を導入しました。

ポイントは次の3点です。

① グローバル標準の業務プロセスを確立

サービス依頼から現場対応、アフターサービスまでの一連の流れを、
国・拠点を問わず統一。
これにより、ナレッジの“共通言語化”が可能になりました。

② 顧客・機器・履歴データと連動したナレッジ活用

IFS Cloudを中核とし、サービス履歴や設備データと、
Aquantの“診断ナレッジ”を連携。

若手でも、ベテランと同等の判断支援を得ながら
対応できるようになりました。

③ KPI連動型のサービス品質向上

初回対応解決率(FTFR)や対応リードタイムなどの
KPIを常時トラッキングし、 ナレッジ活用の有効性を
可視化・改善。

属人化の脱却と同時に、
業務全体のPDCAが可能になっています。

属人化 → 見える化 →
組織ナレッジ化 → KPI改善
という流れ

Makino USA社の例が示しているのは、「暗黙知の継承」を起点に、

属人化の解消 →
見える化された業務フロー →
組織全体で再利用可能なナレッジ →
サービス業務全体のKPI改善

という段階的かつ現実的な進化モデルです。

このように「継承したナレッジを業務に統合する」ためには、
IT基盤の導入だけでなく、現場の運用と経営目線をつなぐ設計思想
重要になります。

ナレッジは“管理”ではなく
“運用”へ

ナレッジマネジメントというと、
どうしても「蓄積・共有」に偏りがちですが、
今日求められているのは、

ナレッジを“活かして判断する文化”を組織に根付かせること

です。

Makino USA社のように、ナレッジが業務の意思決定に使われ、
その結果がKPIに反映され、さらにナレッジが洗練される。

こうした“運用されるナレッジ循環”こそが、
サービス部門のDXにとって鍵を握っていると考えられます。


次回は、「ナレッジをを武器に変える──サービス部門の価値最大化」についてお話しします。

ご質問などありましたら、お気軽にymg-info@ymg-advisory.com宛ご連絡ください。

引き続きよろしくお願いいたします。

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