海外事例ピックアップ #1 - リモートサポートはなぜ広がらないのか?Service Council 2024年レポートから
お世話になっております。
YMGアドバイザリーの山口です。
毎週お届けしているニュースレターですが、今回から隔週で、「海外事例ピックアップ」と題し、注目すべき海外レポートや調査を取り上げ、日本の製造業やサービス部門にとっての示唆をお伝えします。
初回は、Service Council が2024年に発表した 「State of Remote Support」レポート を取り上げます。世界各国のサービスリーダーを対象に、リモートサポートの導入状況と成果を調査したものです。
レポートが示す現実:導入は進むが成果は限定的
レポートによると、回答企業の約7割が「何らかのリモートサポート技術を導入済み」と回答しています。
しかし、その成果については温度差が大きく、全体最適にはまだ程遠い状況です。
導入企業の半数以上が「初回解決率(FTFR : First-Time-Fix-Rate)の改善」を実感
一方で、「顧客満足度への貢献」「サービス契約の更新率向上」については成果が限定的
つまり「導入して即効果」というよりは、効果が一部に留まり、全体的なサービス価値向上まではつながっていないのが現実です。
“サプライズ”と“レッドフラッグ”
Service Councilがまとめた中で印象的だったのは、「サプライズ」と「レッドフラッグ」という2つの観点です。
サプライズ :リモートサポートを導入した結果、「現場派遣を減らす」よりも「新人教育の強化」に効果が出た、という声が多く寄せられたことです。経験豊富な技術者と新人をリアルタイムでつなげることで、教育効果が想定以上に高まったのです。
レッドフラッグ: 一方で「技術を入れたが顧客側が受け入れなかった」という問題も浮き彫りになりました。カメラやリモート接続への抵抗感、セキュリティに対する懸念などが理由です。つまり、導入が「顧客体験」に直結していないケースでは逆効果になるリスクがあるということです。
日本企業への示唆
日本でもコロナ禍をきっかけにリモートサポート導入が進みましたが、多くの現場で「本格活用」には至っていないのではないでしょうか。私がご支援した案件でも、同様の課題が見られます。
社内の評価軸の問題:KPIが「現場出動件数」や「平均作業時間」の削減に偏っており、「顧客満足」や「契約更新率」に結びつかない。
情報構造の未整備:リモートで現場を見ても、必要な情報(部品情報、手順書、過去履歴)が統合されていなければ結局は解決できない。
顧客側の受容性:顧客にとって「便利で安心」と思われなければ、リモートは採用されない。
これらはまさにService Councilのレポートで指摘された「成果の限定性」と軌を一にしています。
まとめ ─ リモートは“教育”と“体験設計”で真価を発揮する
このレポートから学べるのは、リモートサポートを「出張削減の手段」と捉える限り、限定的な成果しか得られないということです。
むしろ、
教育効果の最大化(新人が現場で自立するスピードを上げる)
顧客体験の設計(透明性・安心感をどう提供するか) にこそ真価がある。
日本企業にとっては、リモートを単なるコスト削減の延長ではなく、現場教育と顧客体験をつなぐ戦略的施策として捉え直すことが重要ではないでしょうか。
👉 次回の「海外事例ピックアップ」では、AI活用によるサービス部門の変革事例を取り上げ、さらに深掘りしていきます。2週間後をお楽しみに。
来週は、通常のニュースレターを配信します。次回のテーマは、「日本企業がどのように「自社に合った型」を選び取り、DXを進めるべきか」です。
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