#19:「管理」ではなく「監理」せよ:2026年、DXが失敗する本当の理由(Part 3 実行編開始に際して)

お世話になっております。 YMGアドバイザリーの山口です。

新年あけましておめでとうございます。引き続き本NewsLetterをお読みいただき、ありがとうございます。


1.2026年、現場DXは「実行」のフェーズへ

昨年のPart 2(方針立案編)では、現場DXがなぜ進まないのかを「文化の壁」「人の限界」「構造の欠如」という観点から分解し、

Closed-loopや翻訳プロトコルといった“構造論(Why/What)”を掘り下げてきました。

多くの読者の皆さまから「構造の重要性はわかった」「何をやるべきかの方向性は見えた」という声もいただきました。

一方で、ここから先が本番です。

なぜならDXは、理解した瞬間に成功するものではなく、わかっているのに泥沼化するのが常だからです。

「設計思想は正しいはずなのに、会議が増え、現場の疲弊が増え、最後は“やっぱり使えない”で終わる。」

こうした経験に心当たりがある方も多いのではないでしょうか。

今年から始まるPart 3(実行編)では、この“構造を現実に実装するためのHow”を、徹底的に解き明かしていきます。

その第一回として本稿では、DXプロジェクトが失敗する根本原因を、あえて一言で言い切ります。

「管理」しかしていないからです。2026年、必要なのは「管理」ではなく「監理」です。


2. PMのダッシュボードは「オールグリーン」なのに、なぜ現場は炎上するのか?

DXの失敗プロジェクトには、共通する“怪奇現象”があります。

定例会議では、こう報告されます。

  • スケジュール:順調です(グリーン)

  • 課題管理:大きな問題はありません(グリーン)

  • 要件定義:合意済みです(グリーン)

  • 開発:計画通りです(グリーン)

ところが、リリース直前になって急に現場が反発し、炎上します。

「この画面では回らない」

「入力が増えるだけ」

「誰のためのシステムですか」

「結局、Excelに戻るんですよね」

PMのダッシュボードはオールグリーンなのに、現場は真っ赤。

このギャップが生まれる原因は、驚くほどシンプルです。

「進行(Progress)」だけを管理し、「構造(Structure)」を誰も見ていないからです。

タスクが消化されることと、正しいシステムができることはイコールではありません。

議事録が整備されることと、現場が動くこともイコールではありません。

多くのDXは、「管理」によって“動いている感”を作ります。

しかし本当は、その間にプロジェクトの設計図が歪み、現場との接続が切れ、

Closed-loopが途切れ、最後に破綻が顕在化します。

ここに、一般的なProject Managementの限界があります。

そして、この限界を超える役割こそが、次章で述べる「監理者」です。


3. 必要なのは「Project Manager」ではなく「Project Supervisor(設計監理者)」

建築の世界には、現場を動かす“現場監督”とは別に、「設計監理者」が存在します。

現場監督(PM)が工程・人員・資材を管理するのに対し、

監理者(Architect/Supervisor)はこう問い続けます。

  • 図面の意図通りに施工されているか?

  • 構造上の矛盾が埋め込まれていないか?

  • 見えない部分(配管・配線・耐荷重)は破綻していないか?

  • 完成後に“住めない家”にならないか?

DXも同じです。

PMが見るのは主に「進行の健全性」です。

ところがDXの成否を決めるのは「構造の品質」です。

この構造品質をチェックする役割がプロジェクト内に不在なまま、DXは進んでしまいます。

ここで、両者をあえて定義しておきます。

Manager(管理者): 「納期に間に合うか?」「予算内か?」「課題は潰せているか?」を問う。— 進行のプロです。

Supervisor(監理者): 「その設計でデータはつながるか?」「現場は回るか?」「判断ロジックは再現できるか?」を問う。— 構造のプロです。

ここでいう「構造」とは、業務フローや画面設計だけを指しません。

現場の思考様式・判断基準を、IT/業務設計、そして経営の意思決定へと接続するための「プロトコル変換(翻訳)」まで含めた設計品質を指します。

この変換が設計に埋め込まれていない限り、プロジェクトは“進んでいるように見えて”、現場と経営の間で意味がつながらず、最後に破綻が顕在化します。

多くのDXが失敗するのは、PMの能力不足だからではありません。

PMが見ていない領域に、失敗の原因が埋まっているからです。

YMG Advisoryが2026年に提供する価値は、この後者—設計監理者(Project Supervisor)としての視点です。


4. YMGが提供する「3つの監理視点」

Part 3では、YMGが「監理の技術」を体系化し、具体的なチェックポイントとして公開していきます。

監理の視点は大きく3つです。

① データの監理:つながるべきものは、つながっているか?

DXの現場では「データ連携」がしばしば“技術課題”として処理されます。しかし本質は技術ではなく設計です。

AM-BOM(As-Maintained BOM)とサービス実績、顧客情報、部品、作業ログが、Closed-loopとして循環する設計になっているか。

翻訳プロトコル(現場の判断基準をデータへ変換する規則)が、仕様に落ちているか。

ここが抜けた瞬間、DXは「見える化」で止まります。

② 業務の監理:非計画性を吸収する構造が、設計に入っているか?

フィールドサービスの現実は、予定通りには進みません。

突発対応、欠品、顧客都合、天候、二次障害、スキル差。

にもかかわらず、多くのDXは“理想的に計画された業務”を前提に要件を作ります。

監理者は問います。

  • 「Bufferはどこに入っているか?」

  • 「例外処理は“運用で頑張る”前提になっていないか?」

  • 「非計画性を吸収する緩衝構造が、設計に明示されているか?」

ここを監査せずに実装へ進めば、現場は必ず詰みます。

③ 人の監理:評価制度とKPIは、システムの目的と整合しているか?

プロジェクトが炎上する最大の原因は、実は“機能不足”ではありません。

人が動かない設計です。

評価制度とKPIが、システムの目的と乖離していないか。

入力を求めるなら、その入力が現場に返ってくる循環(自己効力感)が設計されているか。

「現場のがんばり(気合い)」ではなく「学習が回っているか」を測る指標になっているか。

監理者は、ここを“制度として監査”します。


5. あなたのプロジェクトに「監理者」はいますか?

DXが泥沼化したとき、多くの組織は「管理」を強化します。会議を増やし、資料を増やし、進捗表を細かくし、赤字を潰します。

しかし、それは“スケジュール表を埋める作業”に逃げているだけかもしれません。

本当にやるべきは逆です。まず設計図を広げ、構造の歪みを見抜く(監理)ことから始めるべきです。

「管理」では、構造は良くなりません。監理があって初めて、管理が意味を持ちます。

あなたのDXプロジェクトに、設計監理者はいますか?

もし答えが「いない」なら、次に起こる炎上は“偶然”ではなく“必然”です。

次回以降、Part 3では、ここで述べた監理視点を具体的なチェックリスト—監理のPlaybookとして公開していきます。

現場DXを「管理」から解放し、「監理」によって成功へ導くために。2026年、実行編を開始します。


取り上げてほしいテーマ、ご質問、ご相談などございましたら、お気軽に ymg-info@ymg-advisory.com までご連絡ください。

2026年も、引き続きどうぞよろしくお願いいたします。

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#18:2026年に向けた現場DXの布石 ー 次の論点と備え