FSMコンペで差別化するためにやるべきこと ─ RFI→RFP期で“勝ち筋”をつくる

一般的に、IT/DX提案には大きく次の三つのパターンがあるのは、みなさん十分にご承知の通りです。

パターン1:自発提案(課題設定も解決アプローチも主導できる理想形)

パターン2:RFI受領→RFP受領まで(本稿の主眼)

パターン3:RFPのみ受領(“当て馬”化しやすい、制約の多い場面)

パターン3では、他のソリューションの場合は、RFP受領してからでも巻き返しも可能な場合もあると思いますが、FSM/アフターサービスDXの場合は、ほぼ手遅れです(価格勝負に出るしかない)。

理想はパターン1ですが、現実的にはかなり厳しい。

となると、パターン2でどう勝つか、です。ここで「評価軸を顧客語に翻訳し」「As-Is→To-Beのシナリオを小さく見せ」「RFP文書に“勝ち筋の痕跡”を残す」こと。これが後段のコンペを決めます。

本記事では、機能差別化が困難で、多くの場合RFxを受領してから活動が始まる受動的なFSM/アフターサービスDX提案で、どのように勝ち筋を作るか、についてお伝えします。


なぜFSMコンペは差別化が難しいのか

フィールドサービス業務の要件は共通化されやすく、カタログ上はどのベンダーも機能要件を満たせます。

デモやPoCの自由度は低く、購買プロセスは「要件充足→価格」に流れやすい。

だから機能の優劣で勝とうとすると、横並び→価格勝負に落ちます。

差が出るのは「課題の定義」「評価の翻訳」「実行の信頼」です。


パターン2で握る“差別化レバー”

1) 課題設定のリフレーミング(顧客語への翻訳)

「工数削減」では弱い。

FTFR向上→再訪削減→解約防止(機会損失の回避)のように、現場KPI→管理KPI→財務KPIへ“結線”して提示します。

RFI回答には用語翻訳表(例:スケジューラ=“初回完了率のドライバ”)を添え、顧客の社内言語で語ります。

2) 評価基準への“種まき”

補足質問やRFI回答の付録で、評価観点の追加をさりげなく提案します。

例:整備性、初回完了支援(ナレッジ/遠隔支援)、機器カルテ(As-Maintained BOM)精度、データ品質、運用負荷、変更管理、稟議資料の作りやすさ

同時に採点表の雛形(チェックリスト)を「参考」として渡すと、RFPの採点軸に自分の土俵が混ざることがあります。

3) シナリオ型“ミニ”カスタムデモ

汎用Wowデモではなく顧客の1シーンだけを短尺で再現(仮データでも可)。

例:アラート発報→担当割当→部品引当→現場支援(ナレッジ/遠隔)→クローズ→請求。

ポイントは現実適合。課題の“芯”にピンを打つこと(華美な未来像は逆効果)。

4) 「決裁資料の素」を先に渡す

RFP前にA3両面1枚の稟議サマリー雛形(目的/効果/回収/前提)を“善意の付録”として提示。

社内説明の摩擦が下がり、評価者の中で“通りやすい提案”という印象が残ります。※稟議逆算の詳細は別稿に譲ります。

5) “翻訳係”を体制に明記

提案体制に翻訳/稟議伴走のロールを明記(必ずしもSEでなくてもよい)。

「導入して終わり」ではなく、社内説得~実装の摩擦まで伴走する姿勢は、機能では埋まらない信頼差を生みます。


Lesson-learned

産業機械メーカーからRFI。提案ベンダーと顧客との関係性は良好らしく「RFP後の翻訳係」を期待されました。

私はRFP前に「課題リフレーミング+シナリオ型ミニデモ+評価観点の種まき」を提案しましたが受け入れられず、結果は不採用

痛感したのは、RFPが出てからでは遅いという事実。

RFI期に“評価基準を顧客語で可視化し、RFPに痕跡を残す”ことが勝負どころです。

過去担当した電力事業者の案件でも同様な教訓がありました。要は前工程で勝負が決まる、ということです。


パターン別・実務パッケージ

  • パターン1:自発提案

    • 課題診断ライト(2hヒアリング+KPI結線表)/シナリオ型デモ1本/Decision Brief(経営1枚)。

  • パターン2:RFI→RFP〈本稿の主眼〉

    • RFI回答=用語翻訳表+評価観点の付録/追加質疑=短尺デモ+採点表雛形/先出し=稟議1枚の雛形

  • パターン3:RFPのみ(当て馬リスク高) 解釈で差をつける

    • (前提・リスク・スピードtoValue)/No-bid基準を明文化(採点配点固定、実機検証不可、主要関係者にアクセス不能等)。


“視点のズラし方”5選(コンペで効く小技)

  1. 機能→業務成果(KPI接続)に言い換える

  2. 価格→回避額+回収時間で語る

  3. 製品名→実行体制・翻訳係を前に出す

  4. Wowデモ→現場シーン再現に置き換える

  5. RFP回答→RFPを“育てる”付録を添える


RFI受領直後の“30日プレイブック”

  • Week1:仮説課題を顧客語へ翻訳/現場→管理→財務KPIの結線マップ作成

  • Week2シナリオ設計→短尺デモを収録/評価観点の案を文書化

  • Week3:数字の芯(効率化・回避損失・前提)を整える/決裁1枚の雛形をドラフト

  • Week4:主要関係者向けミニ・ブリーフィング/RFP前レビューで“抜け漏れ潰し”


まとめ

  • FSMコンペは機能が横並びになりやすい。差は「課題の翻訳」「評価の種まき」「実行の信頼」に出る。

  • とくにRFI→RFPの期間が勝負どころ。ここでRFPに“勝ち筋の痕跡”を残すこと。

  • RFPのみの場面は“解釈力”で粘るが、当て馬臭が強ければ撤退も戦略

  • 勝ち筋は設計できる。 その設計は、前工程(RFI→RFP)で決まる。


YMGアドバイザリーは、勝率95%を実現してきた「勝ち筋設計」を軸に、提案戦略・デモシナリオ構築・ROI算定をご支援しています。

FSM/アフターサービス提案の勝ち筋設計に悩まれている方は、ぜひ一度ご相談ください。

Next
Next

提案が通らないのはなぜか?──稟議プロセスから逆算するFSM・アフターサービスDX