“診断編”の総まとめ──現場DXのボトルネックをどう整理すべきか
お世話になっております。
YMGアドバイザリーの山口です。
10回にわたり、「なぜ日本でフィールドサービスDXが進まないのか」という問いを、現場と経営の両面から掘り下げてきました。
前回予告では、今回からPart2「方針立案編」へと移るとお知らせしていましたが、その前にPart1「診断編」の総まとめとして、これまで取り上げた典型的なボトルネックを整理し、皆様の現場改革における「診断の観点」を再確認していただければと思います。
ボトルネックは“ひとつ”
制約理論(TOC)では「必ずひとつの制約が存在する」と説かれますが、実際の現場では制約候補が複数存在するように見えることが少なくありません。
重要なのは「それら全部を同時に解決しようとしない」ことです。
現場全体の流れを俯瞰し、全体成果(=スループット)を最も阻害している制約を選び取る力が求められます。
なお、前回も触れましたが、制約は移動し続けます。ひとつの制約を解決できても、それで終わりではありません。
次の制約を見極め、改善のサイクルを続けることが重要です。
過去10回で扱った代表的なボトルネック
属人化と暗黙知の壁(第3回「現場の属人化をどう乗り越えるか」)
ベテラン依存や診断スキルのブラックボックス化が、育成・品質安定を阻害。ナレッジの未活用(第6回「ナレッジを武器に変える──サービス部門の価値最大化」)
共有されても“教育用途”に留まり、経営判断や収益改善に活かされていない。現場プロセスに潜む“詰まり”(第7回「現場プロセスにおける”詰まり”──真の制約はどこか?」)
問診・診断・実作業の各フェーズに潜む情報探索や承認遅延が、業務全体の流れを阻害。管理側の構造的制約(第9回「現場だけを変えても変わらない──管理側の構造的制約とは?」)
KPIの分断、承認プロセスの遅延、サービスを「コストセンター」と見る誤解が、全体最適を妨げる。改善の“順番”を誤るリスク(第10回「どこから改革すべきか─制約思考で見るフィールドサービスDXの全体設計」)
AIスケジューラやモバイルアプリ導入など、部分最適で終わるケース。
皆様の現場では、どこがボトルネックですか?
これらの課題は一見バラバラですが、共通するのは 「ナレッジやプロセスが全体の流れとして機能していない」 という点です。
自社の現場を振り返る際には、以下の観点で整理してみてください。
どのフェーズで時間が異常にかかっているか?
どの業務が「特定の人」でしか回らないか?
顧客満足度や収益性に直結する要素はどこか?
KPIは全体最適につながる設計になっているか?
まとめ──診断から次のステップへ
これまでの「診断編」で明らかになったのは、DXが進まない理由は“現場がITを使わないから”ではなく、組織として制約条件を誤って捉えている、または部分的にしか捉えていないことにあります。
その結果、改善が「効率化止まり」で終わり、真の生産性向上につながらないのです。
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なお、提案者(ベンダー)側の視点では、この制約を見極めて事業会社様に提案することが重要になります。
この点については、私がまとめた次のInsight Reportもご参考ください。
事業会社の皆様にとっても、「提案される側の期待視点」として参考になるかと思います。
次回からはPart2「方針立案編」に進み、「では、その制約をどう乗り越え、どんな戦略的方向性を描くべきか?」を考えていきます。
ご質問などありましたら、お気軽にymg-info@ymg-advisory.com宛ご連絡ください。
引き続きよろしくお願いいたします。